「フロッピーROM」(Floppy ROM)とは、ソノシートにカンサスシティスタンダード(Kansas City standard、KCS)方式で情報を音として記録したものである。雑誌の付録などとしてプログラムを配布するには、カセットテープが不向きであったことから、雑誌に綴じ込み可能な薄さで安価なソノシートが選択された。
雑誌綴じ込みの最初の「Floppy ROM」は、Interface Age 1977年5月号に収められたもの[下記写真参照]である。また日本では、『ASCII』第3号(1977年9月号)に付録としてついていたフロッピーROMが日本最初のものと思われる。なお同付録の告知「BASICソノシートが付きます」は、『ASCII』第3号(1977年8月号)における「編集室から」のコーナーのp.3に掲載されている。
フロッピーROMの利用に際しては、ソノシートをレコードプレーヤーで再生し、カセットテープレコーダやデータレコーダなどでカセットテープに録音しなおす必要があった。
Interface Age 1977年5月号に中綴じされたフロッピーROM

[出典]
Wikimedia Commons “File:FloppyRom Magazine.jpg”
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:FloppyRom_Magazine.jpg
「フロッピーROM」誕生までの直接的経緯は、Jones,Robert S. (1977) “THE FLOPPY-ROM™ EXPERIMENT — Or the Joy of Developing a Simple Idea”Interface Age,2(9), p.28.に詳しく記載されている。
- Jones,Robert S. (1977) “THE FLOPPY-ROM™ EXPERIMENT — Or the Joy of Developing a Simple Idea”Interface Age,2(9), p.28.
https://archive.org/details/Interface_Age_vol02I06_1977_May/page/n29/mode/2up - Blomgren, William (1977) “PLATTER BASIC – The Search for a Good, RandomAccess, Record Cutting Juke Box” Interface Age,2(9), pp.29-36.
フロッピーROMに関する詳細な解説記事、および、4K BASICプログラムのダンプリスト(16進表記によるリスト)。フロッピーROMの表面および裏面( 収納ジャケットの裏面?)のスキャン画像も収録されている。
なお小見出しは下記の通りである。
WHY “PLATTER BASIC” ON A FLOPPY-ROM “?
Why a floppyROM” or platter?”
WHAT’S ON THE RECORD?
WHAT WILL I NEED TO USE THE RECORD?
HOW WAS THE PLATTER MADE?
WHAT IS THE “KANSAS CITY STANDARD?”
HOW DOES IT WORK?
HOW DO I HOOK UP A TURNTABLE?
WHAT ARE THE WEIRD SIGNALS AT THE START OF THE RECORD?
HOW DO I LOAD THE PROGRAM?
WHICH MACHINES CAN USE 4K BASIC? - Turner, William W. (1977) “How to Load the Floppy ROM” Interface Age,2(10), p.56.
https://archive.org/details/197709InterfaceAge/page/56/mode/2up - modernmechanix.com “THE FLOPPY ROM: Software Distributed on Records (Oct, 1977)”
フロッピーROMの高解像度の画像が掲載されている。またInterface Ageにおける2番目のフロッピーROMに関する記事「THE FLOPPY ROM #2」テキストも掲載されている。
- tangiblemediacollection.com “Floppy ROM”
https://tangiblemediacollection.com/artifacts/floppy-rom - Museum of Obsolete Media “Floppy ROM (1977 – mid 1980s)”
https://obsoletemedia.org/floppy-rom/ - YouTube解説動画「The Floppy Rom – Software on a Flexible Vinyl Record」Random Tek
https://www.youtube.com/watch?v=xf_wZpcYNYM - 正多面体クラブ(2012)「ASCII 創刊号」2012年12月22日
https://polyhedra.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/ascii-91c6.html
1970年代当時、フロッピーディスクドライブや磁気テープ装置(オープンリール型)は、価格が高く個人では購入困難であった。そのため一般家庭にあった市販のポータブル・カセットレコーダーと安価な民生用カセットテープをそのまま外部記憶媒体として活用するための開発が進められた。
1975年11月にはコンピュータ雑誌『Byte』の編集長ウエイン・グリーン(Wayne Green)らの呼びかけにより、ミズーリ州カンサスシティに主要なコンピュータメーカーや開発者18名が集まり、カセットテープにデジタルデータを保存するための標準規格を確立するための会議が11月7日(金)の夜遅くから11月8日(土)の朝までおこなわれた。
そこで「高い信頼性が期待でき、実装コストも比較的低いと思われる」暫定標準案が作成された。
Penchansky, A. (1979). “New Building for ‘Soundsheets’ Firm”. Billboard (New York: Billboard Publications, ISSN 0006-2510), 91(45), p.88.
会議後、 Lee Felsenstein (of Processor Technology)とHarold Mauch (of Percom) が規格を作成し、Byte誌の創刊号に掲載された。
https://archive.org/details/byte-magazine-1975-09/page/22/mode/2up
[関連参考資料]
- 植本五郎(1977「オーディオカセットの標準化:カンザス•シティスタンダード」『アスキー』創刊号(1977年7月号),pp.24-25
本論考の冒頭で下記のような解説がなされている。東通工(現ソニー)が日本で初めてテープコーダを製作・販売した時に「テープを照明コントロールなどに使おうとした試み」があったことの指摘など、有用なので少し長いが引用しておく。1975年11月にアメリカミズリー州のカンザス・シティにアマチュアクラブの代表や,メーカーの代表が集って,安価なオー ディ オカセットによるプログラム交換の可能性について検討し た結果,合意に達したのがこのカンザス・シティ・スタンダードの規格である.
このカンザス・シティ・スタンダードはハードウェアのレベルでの規格であって,データ構造に関してはふれていない.オーディオ用のテープレコーダにデータを貯えるように機器を作り,マイクロコンピュータの大量外部記憶装置として使用したいという考えはずいぷん古くからあって,ソニーの前身である東通工が日本で初めてテープコーダを製作販売した時にテープを音だけではなくて,照明コントロールなどに使おうとした試みがあった.PTRの機能の延長としてのオーデイオカセット
オーディオカセットに比べて,ディジタルカセットはCPUからの制御によってアクセスすることができ,内部記憶の延長として考えてよい.ところが,オーディオカセットの場合は,モーターのON-OFFのコントロールが付いているだけで,あとは,流しっぱなしである.この点でオーディオカセットは紙テープと同じ形態の外部記録メディアとして考えるのが適当である.
紙テープの置き換えとして,オーディオ・カセットを考えてみると,共に低コストな記録媒体であり,シリアルアクセス用のメディアである.
コンパクトであること,リーダーへのロードがしやすいことなどがカセットのすぐれている点である.また,パッケージになっているので,ライブラリーの管理も容易である。高レベル言語での交換に有効
現在のところ,まだプログラムの交換はテーマとはなっていないが,やがてプログラム言語の主流がBASICなどに高レベル化してくると,プログラムは,ASCIIで書かれたストリングスになる.そういうプログラムで書く,広く汎用性や応用性に富む種類のものは,有償,無償の差はあっても,また8080とか6800などのプロセッサの違いを越えた次元で,ユーザーの共通財産にするという方向性が望まれる.この意味で,最小限ハードウェアのレベルで,オーディオ•カセットのデータ記録を,業界はこの様式に準ずることが好ましい.ROMの代用
PROMにシステムプログラムを焼き込んでおき,POWER-ON-START を行うシステムもあるが,コストの点で問題がある.最小限の口ーダ(CPL: Cassette Program Loader)だけをROMに入れておき,システムテープを読むと動き出すようにしておく方向が,低コストのCPUシステムでは見られる.現在PROMはビットあたり1円,RAMはビットあたり50銭ぐらいであり,この方式は8Kバイトぐらいのソフトウェアを必要とするシステムや,機能がたびたびかわる多目的のシステムによい.別名CUTS
このカンザス•シティ•スタンダードは,別名CUTS: Con-puter Users Tape Systemとも呼ばれている.- 西和彦「アメリカマイコン事情:今,何がはやっているか, これから何がはやるか?」『アスキー』第4号(1977年10月号)pp.18-19
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フロッピー・ROM
オーディオ・カセットにプログラムを入れて売るのがはやっているが, プログラムがレコードになった.それが,フロッビー•ROM である.発案者は,インターフェイス・エイジ社のロバート・ジョーンズ氏.インターフェイス・エイジ5月号は, このソノシートで6800 の4K BASICのプログラムを附録に付けている.フロッピーディスクと形が似ているが,読み出ししかできないので, こういう名前にしたとのこと.米国内で,5 月号は$1.50.フロッピー・TAPE
フロッピー・ディスクがあるのだから,フロッピー・テープがあっても良いのではないかと思っていると,アメリカには本当にあるのだ.記憶媒体には,何を使用しているかというと,実はこれ,カーステレオ用のエイトパック・カセットである.これをテープデッキに差し込むと,エンドレスでテープが回って,ファイルとして使おうということである.すでに実用になっている. - 西和彦「アメリカマイコン事情:今,何がはやっているか, これから何がはやるか?」『アスキー』第4号(1977年10月号)pp.18-19