1970年代前半期のmicrocomputerの広告等における性能・機能の「誇張」表現問題

1970年代前半期にはmicrocomputerに関する広告やマニュアルでは、下記のようにmicrocomputer製品の機能・性能がminicomputerと匹敵するかのように論じられているが、これはmicrocomputerやPersonal computerが製品カテゴリーとして認知されてはいないために最も近い既存製品カテゴリーに位置づけたことや、製品拡販のために一定の「誇張」表現を必要としたことによるものである。
1)R2E(Réalisation d’Études Électroniques)のMIcral(1973)
Micralは「極めて低コストであることを主要な特徴とする、初めての新世代ミニコンピュータである」(Réalisation d’Études Électroniques(1974) Micral Users Manual, p.76)とか、「普通のミニコンピュータが目的としない」プロセス制御がMicralの主要用途である(ibid.,p.66)とされている。
Réalisation d’Études Électroniques(1974) Micral Users Manual
http://bitsavers.org/pdf/r2e/MICRAL_N_Users_Manual_Jan74.pdf
2) MITSのAltair8800(1975)
MITSのAltair8800に関して、Popular Electronicsの1975年1月号表紙におけるキャッチコピーは 「商用モデルと競う、世界最初のミニコンピューターキット」(World’s first minicomputer kit to rival commercial models – the Altair 8800)、「これまでになされた中で最も強力なミニコンピューター・プロジェクト」(The most powerful minicomputer project ever presented – can be built for under $400)というものであり、Altair8800をminicomputerとするような記述がなされている。
 またRoberts, H. Edward and William Yates (1975) “Exclusive! Altair 8800: the Most Powerful Minicomputer Project Ever Presented-Can be Built for Under $400,” Popular Electronics, January 1975, p.34においては、「[Altair]8800で使用されているCPUのインテル8080というLSIチップは、・・・現在の商用ミニコンピューターとその性能を競うミニコンピュータを創る役に立っている」(The CPU used in the 8800 computer, the Intel 8080 LSI chip, is relatively expensive in quantities of one. It was selected, however, because it serves to create a minicomputer whose performance competes with current commercial minicomputers)と言うように主張されている。
 なお同論文のp.33ではAltair8800で使用されているインテルのCPU8080の「基本命令語は78語であり、通常のミニコンピューターの40語よりも多い」( It has 78 basic machine instructions ( as compared with 40 in the usual minicomputer)).とも書かれてている。